食べ物の乾燥保存のお話

昔から、食べ物を保存するのにさまざまな工夫がされてきました。

冷凍する、乾燥させる、塩漬けにする……など、一つ一つあげたらきりがありません。

今回は、その中でも「乾燥させる」ことにスポットを当ててみましょう。

乾燥方法

昔からある乾燥方法といえば、日光や風の力を利用した方法です。

日光に当てて温度を上げることで、水分の蒸発(じょうはつ)を促したり、風で湿(しめ)った空気を押しやるというものです。

干し柿や干物はその代表例でしょう。

火を使って、水分の蒸発をさらに早める方法もあります。

ベーコンやスモークサーモンなどがこれにあたります。

さらに、比較的新しい乾燥方法に、フリーズドライというものがあります。

これは、冷凍した食材を真空の中に置いて乾燥させる方法です。

フリーズドライ

私たちがふつうに生活している環境では、水は、

「固体(氷)←→液体(水)←→気体(水蒸気)」

というように、状態が変わります。

ところが、真空中などでは、

「固体(氷)←→気体(水蒸気)」

というように、固体が直接気体に変わる「昇華(しょうか)」という現象が起こります。

凍らせた食材を真空中に置くと、中の氷が昇華して水蒸気になります。

そしてわずかな隙間(すきま)を通って食材の外へ逃げていくのです。

加熱乾燥や天日干しがよく知られているので、フリーズドライの「冷やして乾燥させる」というのは、ちょっと変に思うかもしれませんが、食材の水分を減らしているという点でやはり「乾燥させる」という表現は間違っていません。

フリーズドライは、素材の風味や栄養がほとんど損なわれないという利点があります。

また、軽くて水で元に戻しやすいので、カップラーメンの具などに使われています。

まとめ

フリーズドライに似た方法に、冷凍と解凍を繰り返すという方法もあります。

これは、高野豆腐を作るときに使われる方法です。

豆腐をいったん凍らせて、解凍するときに水分を除いていくんですね。

ほかにも、南米アンデスでは、先住民が同じような方法でジャガイモの水分をしぼり出し、「チューニョ」という保存食を作っていたそうです。

「乾燥させる」一つとっても、いろいろな方法がありました。

やはり、食べ物の世界は奥が深いですね。

このお話は、2011/10に CAST@NET で配信されました