初代代表挨拶
幼い時に公開実験を見て興奮した、理科の本を読んでわくわくした、実験教室で実験を教えてもらったのが今でもとても記憶に残っている…。このように科学実験などに心を動かされた経験のある人は多いのではないでしょうか?私もその一人でした。今度は逆に自分が科学の面白さを伝えたい、科学で人の心を動かしてみたい。いつしかそう思うようになりました。
このような活動は、サイエンスコミュニケーションと呼ばれるものの一種です。サイエンスコミュニケーションとは、科学を専門としない一般の人々に科学の面白さ、素晴らしさを伝えていこう、またそのような人々と科学者の距離を縮めていこうという活動です。例えば、専門家を囲んでアットホームな雰囲気で話を聞くサイエンスカフェ、ストーリー仕立てで実験や解説をするサイエンスショー、実験教室、科学読み物の出版など様々な形式があります。
CASTはCommunicators of Science and Technologyの略です。その名の通り我々自身が科学の伝道者となるべく活動しています。またcastには投げかけるという意味もあります。社会に対して科学の意義を投げかけていこうという思いも込めて、CASTという名前となりました。自然科学系サークルは数多くありますが、CASTは外部に対して科学の面白さを発信することを目的として活動しており、学園祭でのみ発表をするようなサークルとはひと味違った楽しみがあります。他団体や企業と関わる機会が多いのもCASTの活動の醍醐味の一つと言えるでしょう。もちろんそういったことが苦手な人も十分楽しめる活動がたくさんあります。具体的な活動の雰囲気はこのWebページを読めば分かってもらえると思います。
科学の面白さを伝える、と言いましたが、『面白さ』とは何でしょうか?何かしらの実験・現象を見て、「良く分からないけどすごい!」という感想で終わってしまっては、手品を見ているのと同じです。残念ながらその段階で終わってしまっている公開実験の類が多いのが現状です。CASTではその不思議な現象を引き起こす原理や法則をしっかりと理解し、納得することで科学的考え方を身につけてもらうことを重視しています。不思議な現象が起こる理由を自ら時間をかけて考えた後に、それが科学により明快に説明できると知った時の感動こそが科学へ関心を持つ大きなきっかけとなるのではないでしょうか。CASTは『なるほど!』を大切にしています。そのため、実験を見せることにより科学の何を伝えるか、それをどのように伝えたら効果的か、そういったことを日々追究しています。実験を開発する集会も定期的に開かれていますが、そこではこのような厳しい突っ込みがあることもしばしばあります。
CASTは2009年2月に結成されたばかりですが、この一年間ですさまじい進化を遂げました。それはプロジェクトが多岐に渡っていることからも分かると思います。駒場小学校やサイエンスコミュニケーションの最先端を行くお台場の科学館(日本科学未来館)から依頼が来るまでになり、CASTの実力は認められてきました。CASTはまだまだ発展途上で、今後の可能性は未知数です。皆さんのアイデアがCASTで活きること間違いなしです。一緒にサイエンスコミュニケーション活動をしてみませんか?一生をかけて尽力したいと思えるほど、夢中になれるものがそこにあります。CAST一同、みなさんをお待ちしています!
東京大学サイエンスコミュニケーションサークルCAST 初代代表
理学部物理学科3年 (2010年当時)
西口大貴