お餅のお話
みなさんはお正月にお餅(もち)を食べましたか?
お餅はつきたての時はやわらかくても、しばらく経つとまた固くなるので保存がききますよね。
そして、固くなったあとも、焼いたり煮たりするとまた柔らかくなります。
これはどういう仕組みで起きているのでしょうか。
α化とβ化
お餅がやわらかくなる現象は「α化(糊化)」、固くなる現象は「β化(老化)」と呼ばれています。(α:アルファ β:ベータ 糊化:こか 老化:ろうか と読みます)
これは、もち米やうるち米に含まれているデンプンがかかわる現象です。
もち米のα化は加熱や、水分の増加によって引き起こされます。
もち米の中のデンプンに水分と熱が加わると、それまでくっつきあっていたデンプンの粒(つぶ)同士に隙間(すきま)ができ、もち米がふっくらと柔らかく消化しやすい形に変化します。
これが、最初にもち米をついてお餅にするときに起きている現象です。
逆に、β化は冷やされたり乾燥(かんそう)したりすることで起きます。
冷却や乾燥によってデンプンの粒同士の隙間は小さくなり、再び固く消化しにくい状態に戻るというわけです。
これが、ついたお餅が固くなるときに起きている現象です。
もち米からお餅にするときに起きるα化と、固くなったお餅を温め直すときに起きるα化は、原理的には同じ現象ですが、少し様子が異なります。
一度もち米からお餅にした後に固くなったものは、α化に必要な水分は十分持ったままβ化している状態です。
だから、もち米のα化と違って、お餅は加熱だけでも離れていた水とデンプンが混ざり、再び柔らかくなります。
ところが、β化したお餅がさらに水分を失ってしまう(全体の重さに対する水分の割合が約40%以下になる)と、煮てもα化しなくなります。
そのかわり、この状態で焼いたり揚げたりするとα化が進み、以後β化しなくなります。不思議な性質ですね。
この性質を利用して作られているのが、あられや煎餅(せんべい)です。
サクサクした煎餅も、もちもちのお餅も、α化したデンプンのおかげで
おいしく食べることができるんですね。
他の食品も
デンプンのα化とβ化は基本的に繰り返すものですが、α化したまま保存することもできます。
今度はうるち米の話になりますが、たとえば、保存食の「アルファ米」。
これは、炊いたお米を急速に乾燥させて、α化したまま保存食にしたものです。
デンプンには、α化したままの状態で水分が10パーセント以下にまで急速に変化すると、β化が進まなくなるという性質があります。
この状態のお米に水を与えて乾燥状態をとくと、すぐに食べられるようになります。
保存食に最適ですね。
他にも、冷凍(れいとう)によってβ化の進みを遅らせることが出来ます。
冷蔵庫(れいぞうこ)の中の0℃付近の温度ではβ化がよく進んでしまいますが、-20℃程になるとβ化が進みにくくなります。
だから、炊いたお米を保存する時は、冷蔵室ではなく冷凍室に入れると、
次に食べる時に美味しく食べやすいのです。
みなさんも、炊いたお米を保存する時には是非冷凍室で保存してみてください。
このお話は、2012/01に CAST@NET で配信されました